子供を持つ母親や、介護などの都合で、パートとして働いている方は多くいます。
社会保険に入らず、夫の扶養の範囲内で働いて、少しだけ家計を助ける、そんな働き方もアリですよね。
しかし、そんなパート勤務の方の社会保険の加入条件が、2016年に改正されることが決まりました。
一体どのように改正されるのか、今回はパートの2016年に改正される社会保険加入条件や、106万円の壁についてお伝えいたします。
現在の社会保険の加入条件は?
パートタイム勤務の労働者の社会保険適用条件が、2014年8月に決定し、2016年10月から適用されることになりました。
これは、「短期間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大」を目的とした規制緩和の政策です。
ようするに、「パートタイムの人でも、社会保険をきちんと受けられるようにしますよ」、という法律です。
社会保険とは、「厚生年金保険 + 健康保険」という認識が一般的で、その他、雇用保険や労災保険なども含めて「社会保険」と呼ばれます。
正社員であれば、それらの保険にすべて加入するのが大前提で、パートやアルバイトなどの短時間労働者も一定の条件をクリアしていれば加入することができます。
パート勤務の方は、これらの社会保険に加入せず、夫の扶養範囲内で働いている方も多いかと思います。
では、「扶養の範囲内で働く」とは、そもそもどういうことなのでしょうか?
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103万円の壁・130万円の壁
パート勤務で働くうえで、よく言われるのがこの言葉。夫が会社員で、妻がパートとして働く場合を例に見ていきましょう。
103万円の壁とは、妻の年収が103万円を超えた場合、妻自身に所得税がかかってくるラインの事。
130万円の壁は、妻の年収が130万円を超えた場合、妻自身に、所得税+住民税(市県民税)がかかってくるラインの事です。
この壁を超えると、手取りの金額から税金が引かれることになるため、手取り額が減るよりは、収入を少なくして働こう、と考える人が多いのです。
この壁を超えると、夫の所得税の配偶者控除が受けられなくなる、夫の会社からの配偶者手当が受けられなくなるといった、デメリットがあります。
夫の扶養に入っていれば、妻には社会保険や税金の支払い義務が発生しないのです。
現在のパート勤務の社会保険の加入条件は以下の通り。
・1週間に30時間以上勤務していること
この条件を満たしておらず、年収も103万円や130万円を超えていなければ、社会保険の適用はされません。
では、今回の改正で、この加入条件がどう変わったのでしょうか?
改正後の加入条件はどう変わる?
今回の改正で、新たに登場するのが、「106万円の壁」です。
年収が106万円を超えた場合、社会保険の支払義務が発生してくることになります。
【改正後の社会保険の加入条件】
- 1週間に20時間以上勤務していること
- 月収あたり8.8万円の収入があること(年収で106万円の収入)
- 従業員(正社員)が501人以上の企業で働いていること(ただし今後範囲が広がる可能性あり)
これらの条件を満たしていると、社会保険に加入しなければなりません。
仮に、月収8.8万円の収入がある場合、地域によっても異なりますが、社会保険料は月額約1.3万円となるため、いままで扶養の範囲内で働いていた人にとっては、手取りが減少することになります。
つまり、106万円の壁とは、妻自身に 所得税 + 社会保険料の支払いが発生するということです。
そして、130万円の壁を超えると、所得税 + 社会保険料 + 住民税(市県民税)を支払うことになります。
今現在扶養の範囲内で働いている方にとっては、手取りの減少になるため、あまり歓迎できない改正ということになりますね。
今まで通り、扶養の範囲内で働きたい場合は、
- 勤務時間を週20時間以内に抑える
- 年収を106万円以下に抑える
- 従業員500人以下の会社に転職する
しかありません。
しかし、いずれも収入の減少につながるため、この機会にもっと多く働くことを考えてみてもいいかもしれません。
社会保険加入のメリットとは?
社会保険の加入条件緩和は、パート勤務の方にとっては、手取り額が減少するなど、デメリットが先に目につくかもしれません。
しかし、社会保険の加入は、その分メリットが多く、目先の手取り額だけで判断するのは早計と言えます。
社会保険加入条件緩和によるメリット
将来的な年金受給額が増える
当然ですが、厚生年金の支払いを行っていくため、将来もらえる年金が、基礎年金 + 厚生年金 の受け取りとなり、受給額が増えるというメリットがあります。
社会保険に加入していない場合は、基礎年金だけの受給なため、将来もらえる金額は増加します。
また、障碍者年金や、遺族保障、傷病手当など、国民保険では受けることのできない手当も多数あります。
育児休業給付金や失業保険がうけられる
パートでも、通算1年以上勤務していれば、雇用保険によって、育児休業給付金や、失業保険を受けることができます。
受け取れる給付金は、給料の67%(最初の半年間)が見込まれるため、万が一の場合にも安心です。
健康診断が受けられる
正社員には、会社側から健康診断を年1回受けさせることが義務化されていますが、社会保険の支払いのないパート労働者は、健康診断を受けることができません。
自分自身で健康診断を受ける手間を考えれば、このメリットは大きいですよね。
社会保険料の支払いによって、手取り額が減少することにばかり目が行きがちですが、社会保険に加入することのメリットは非常に大きいものが多くあります。
これを機に自分自身の働き方を考えてみるといいかもしれません。
おわりに
社会保険の加入条件改正は、2016年の10月から適用されます。
始めは、従業員が501人以下の企業が対象となっていますが、徐々にその範囲を広げていくことが見込まれるため、「大企業じゃないから関係ない」というわけではありません。
厚生年金や健康保険などの社会保険に加入することにはメリットもデメリットもあります。
それらを理解したうえで、この機会に自分の働き方を考えてみるのもいいかもしれません。
新しく登場する「106万円の壁」をどう考えていけばいいのか、パート勤務の方にとっては、悩みの種になりそうですね。